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 じろじろと金山の顔を見ていると、再び頭を叩かれた。そしてむっとした顔のまま水を飲む。俺はずれた眼鏡を掛け直して、ちらりとメニューを見る。ちょっと小腹も減ったし何か頼むかな。金山も要るだろうか。
 金山にも見えやすいようにメニューを置くと、すっかり普段通りの顔になっていた金山もメニューに視線を遣る。

「何か頼みますか?」

 金山はじっとメニューを睨んだ。

「…コーヒー」

 飲み物だけか。もしかして腹減ってないのかな。いや、でも金山って結構な量食べてたから、単にこの中に食べたいものがなかっただけなのかもしれない。
 しかし…俺だけ何か食べるっていうのもな…。と、思ったが、やっぱり食べたい。頼もう。

「頼んでいいですか?」

 確認をとると、金山は無言で頷く。俺は近くにいた店員を呼んだ。笑顔でこっちを向いた店員は、一瞬金山を見て固まった。しかし再び笑顔を浮かべると、こっちへやってくる。
 注文を訊ねてきた店員に、コーヒー、そしてワッフルアイス添えを注文した。アツアツのワッフルに冷たいアイスというものだ。旨そう。
 以上ですと伝えようとした時、金山がぽつりと言った。

「じゃ、俺もそれ」

 あっ。金山も頼むのね。金山も食べたくなったんだろうか。旨そうだもんな。ちょっとにやにやしていると、いつの間にか店員はいなくなっていた。

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