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 話し終えると、沈黙が流れる。恐る恐る金山の様子を窺い見ると呆れた顔をして俺を見ていた。

「…んなの今更だろーが」
「え…?」
「俺が今までやってきたこと考えれば、疑われても仕方ねえだろ。俺自身他人からどう見られようと興味ねえし」
「でも、それでもし捕まったら…」
「そん時はそん時でどうにかすりゃいいだろ。つーか、夢なんかぐだぐだ考えてんじゃねえよ」

 確かに考えすぎかもしれない。でも、正夢の可能性もあるし、あれが現実味を帯びた夢だったから、こうしてぐだぐだ考えてるんだ。
 いまいち納得していない俺の顔を見て、金山は溜息を吐く。そして舌打ちをして、俺の頭を叩いた。少し痛かったが、以前のものに比べると全然痛くないので、かなり手加減をしているんだろう。
 頭を押さえていると、金山は俺を無視して歩き出す。ずきりと胸が痛む。女々しいやつだと思われただろうか。俺はこっそり溜息を吐いて、背中を追った。







 会話がなくても気まずくない…が、流石に今は気まずかった。金山は不機嫌顔で歩いているし、俺は多分情けない顔をしていると思う。これ傍から見たら――と思って、先程の金山の言葉を思い出す。「他人からどう見られようと興味ない」ってやつ。確かに気にした風には見えない。俺が気にしすぎなんだろうか。…だからあんな夢を見てしまったのか?
 俺は眉間に皺を寄せて考える。その時、隣から「おい」と声がかかった。

「ここ、入るぞ」

 顔を上げると、落ち着いた雰囲気のカフェがあった。断る理由もなく、座りたいと思っていたから俺はすぐに頷いた。

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