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例えば金山が更生したとしたとしても、もしこの辺で事件があったとしたら。もし、疑われるような位置に金山がいたとしたら。俺が今よりも金山のことを理解し、やっていないことを知っていても、周りはそうは思わない。だって、俺が金山と関わりのない奴だったら、納得するから。――ああ、あいつならやりそうだと。…まあ、やりそうだっていうのは今でも思うけど。でも、最近はちょっと大人しいから最初ほどではない。
ぐるぐると思考の渦に巻き込まれていると、頭に衝撃が走った。と言っても決して強い衝撃ではなく、ぽこ、という音が似合う程度のものだった。俺の意識ははっと現実に戻され、顔を上げる。眉を顰めた金山が俺を見下ろしていた。俺は自分がまだ百円玉を持っていることを思い出し、慌てて差込口に入れる。そしてちらりと様子を窺う。結局、俺がやるのか、それとも金山がやるのか…。金山は動こうとしない。金山も動かない俺に焦れたのか、口を動かす。やれ、と動いた気がした。っていうか絶対そうだ。俺はこくこくと頷き、席に座る。
……さて、座ったはいいけど、俺レースゲームとかやったことないんだよなあ…。勿論免許も持ってないから、運転したこともないし…。
「まあ、ゲームだしなんとかなるか…」
小さく呟いて、適当に車を選んでいく。性能とかで選ぶのがいいのかもしれないけど、良く分からないし格好いいと思ったやつにした。
ドキドキワクワクしながらハンドルを握りしめる。金山に格好いいところを見せたいというか、みっともない結果を出さないようにしよう。
――結果は、悲惨なものだった。
まさかこんなに難しいとは思っていなかった。事故の回数や被害総額などが表示されている画面を見て溜息を吐く。こういうのって最初は皆こうなのかな。
いつの間にか音楽は別の曲になり、先程かかっていた曲より音量が小さかった。加えて周りも人が全然いなくて、煩いとまでは思わなくなった。
「へたくそ」
はっとして後ろを向くと、なんと、金山が――笑っていた。どきりと心臓が跳ねる。なんだ、それ、いきなりその顔とか、反則だろ。にやりとした笑みなら何度も見たことがあるが、こんな、普通の男子高校生のような笑みはレアだ。
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