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 大急ぎで用意をし、走って待ち合わせに向かったため、遅れることなく到着することができた。よく考えれば金山が時間通りに待ち合わせ場所にいるはずないから、少し遅れても大丈夫だっただろう。
 ――と、思っていたんだが。

「おせえ」

 荒い息を整えている時に後ろからかけられた声に驚き、咽てしまった。なんと、金山がいたのだ。約束の時間の前に!
 遅いと言うことは、大分前からいたのか? いやでも金山のことだ。一秒でも待ったら遅いと言いそうだ。どれくらい待たせたのか分からないが、とりあえず謝ろう。

「す、すみ、すみませ、ん」

 荒い息のままなんとか伝えるが、金山はふんと鼻を鳴らしただけだった。怒ってはいないみたいだ。ほっとしながら、息をゆっくり吐く。漸く落ちついて来た。
 俺は周りを見回す。こっちを見ないように歩く人、逆に好奇の視線を寄こす人、金山に見惚れている女性、作業的に歩く人。俺たちが交際しているとは、誰一人として思っていないだろう。友人にも見えないし、思うとしたら、パシリ、もしくは絡まれている哀れな男と不良だろう。まあ、実際パシリだったし。付き合っていても、普通にパシられるし。でも、金を渡されたり、時々付いて来たりするようするようになった。何が変わったって、俺たちの関係を表す言葉と、それくらいだ。

「……で、どこ行くんだよ」

 怠そうに訊ねてきた金山に、あらかじめ考えておいたプランを頭に浮かべる。
 今日、誘ったのは俺だ。……いや、俺というか、渉だ。俺と金山は一緒に遊ぶなんて全く考えちゃいなかったが、渉が付き合っているんだからデートの一つや二つしろ、と言ってきたのだ。もちろん断ったがあの有無を言わさぬ黒い笑みで頷かされた。
 金山も、何故かオーケーするし……。

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