初デート

パシリくん番外編
金山×達也







金山と付き合ってから、一ヶ月が過ぎた。その一ヶ月は実に平和だった。金山も俺には優しく接してくれたため、交際は順調だった。
 しかし、事件が起こった。

「え…?」

 俺は目を見開き、聞き返す。

「今、なんて…」

 俺の声はみっともなく震えていた。手首をもう片方の手で握っていないと、震えてしっかり携帯を持つことができない。電話の相手、山口渉は神妙な声で、再度言った。

『……金山が、逮捕された』

 ゴト、と携帯が滑り落ちる。ぐにゃりと視界が歪む。真っ直ぐ立っていられず、その場に座り込む。嘘だ。――誰か、嘘だと、言ってくれ。
 携帯から声がかすかに聞こえる。何を言っているか聞き取れない。渉がまだ何かを言っている最中だったが、電話を切ると、急いで金山に電話をかける。
 プルルルルという無機質な音が流れるが、金山は出ない。俺は目の前が真っ暗になったのを感じた――。















 はっ、と意識が浮上する。視界に入るのは、見慣れた天井。俺はゆっくりと起き上がる。びっしょりと汗を掻いていた。慌てて携帯を見る。直前に渉から電話がかかってきていないし、日付はあの日から数日しか経っていない。

「……、夢…?」

 呟いてみても、中々実感が湧かなかった。内容が内容だったからな…。
 とりあえず、現実じゃなかったことに胸を撫で下ろすが、時計と、今日の日付をもう一度確認してさあっと青ざめる。
 やばい! 今日って金山と約束した日だ!
 起きる予定だった時間はとっくの昔にすぎている。ここでのんびりしている場合ではない!
 俺はベッドから転げ落ちるように降りると、素早く身支度をした。

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