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「あいつとは話すなっつっただろ」
「あっ…」

 それか! …ということは俺から相談受けた、みたいな感じで話したんだろうか? それ、俺が金山のこと好きだと思われそうで、ちょっと嫌だな…。まあ、もう話してしまったなら仕方ないけど。

「すみません」
「ふん」
「えっと、どうしてそのことを…?」

 一応訊いてみれば、金山は不機嫌そうに俺を睨む。

「紙」
「かみ?」
「紙が入ってたんだよ、靴んとこに」

 「テメェとは良く話したり遊んだりしてるってな」金山はチッと舌打ちをした。

「俺ぁ一応テメェのこと信じてたんだぜ? でも、テメェはこそこそとこいつと連絡を取り合ってたってわけだ」
「あ、いや、その…」

 蔑むような目でこっちを見る金山に、背筋が凍った。同時に胸がずきりと痛む。騙していたという罪悪感なのか、それとも…。
 金山はもう話は終わりだというように、俺から視線を外し、体を前に向ける。すぐ近くにある背中が、凄く遠く感じて、俺は小さく溜息を吐いた。

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