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 というようなことがあった翌日。金山は相当機嫌が悪い様子で登校してきた。俺を射殺す勢いで睨むと、低い声で俺に話しかけてきた。

「テメェ…何か俺に言うことあるだろ」

 俺はすぐに理解した。山口だ。絶対原因山口だ。いやでも、今さっき金山が登校してきたんだぞ? 行動早すぎるだろ。…かと言って、他に原因も思いつかないし、やっぱり山口か?

「…や、」

 山口、と言おうとして、言葉を止める。そう言えば、山口のことを名前で呼んでるっていう設定だったな。実際そう呼んでいないし、あいつに従う理由もないから、普通に苗字呼びでいいと思う、けど。俺は、渉と呼んだら、金山はどういう反応をするだろう、と少しだけ――そう、少しだけ。気になったんだ。

「わ、渉、のことですか?」

 名前を呼び慣れていないのと、緊張から声が少し上擦った。金山はピクリと眉を動かす。そしてドスの利いた声で聞き返してきた。「ああ?」
 ひい、と思うのと同時に、何だか良く分からない気持ちがあった。

「渉っつーのは、あんときのクソ野郎だな?」

 ギラギラと光る眼に見つめられる。俺は捕食者の気持ちになりながらこくこくと頷いた。

「あの、渉が何か…」
「クソ野郎の名前言うんじゃねえ殺すぞ」

 こわ! どんだけ山口のこと嫌いなんだよ!




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