15

 俺でも若干忘れかけていたのに、まさか金山が覚えているなんて。

「そうか」

 それだけ言うと再び無言になる金山。ずっと気にしてくれていたんだろうか。心臓がむず痒くなって、意味もなく白米をつついた。金山が俺を好きかもしれないと思っているからかは分からないが、金山が優しい、気がする…。そんなに悪い奴じゃないのかもしれない。いや待て。毒されるな。人をぱしったり殴ったり平気でする奴だぞ。単純な自分に呆れる。…でも、前より嫌いじゃない。
 このまま、もやもやとしたまま過ごすのは嫌だとも思う。高校生活の思い出がパシリだなんて最悪だ。だから、やっぱり、はっきりさせたい。もしやばかったら山口を呼ぼう。来てくれるか分からないけど。っていうか、来ない確率の方が高そうだけど。

「あ、あの」
「あ?」
「好きな人とか、いますか」
「は?」

 金山は相当意外だったのか些か上擦った声を出して、目を見開いた。教室は静かだが、きっと皆心の中で「は?」と思っているんだろうな。
 いきなり俺のこと好きですか、という質問はおかしい上にこんなところで言えないので変えたが、これもちょっとまずったかな。唐突すぎる。
 奇妙な空気の中、金山は探るように俺を見た。

「…んなこと訊いて、どうするつもりだよ」
「えーと、あの、ちょっと、気になって」

 あははと乾いた笑みを浮かべるが、金山はじっと俺を睨んでいるだけだ。


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