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「おせえ」

 予想した通り、金山はお怒りだった。おずおずと袋を差し出すと、俺の手から袋を奪った。遅い、だけか。これがほかの人だったら何を言われていただろう、とぼんやり思った。言われるだけじゃすまされないかもしれない。やっぱり、俺のことが…? ちら、と金山を見ると、目が合った。どきりと胸が鳴って、顔が熱くなる。慌てて目を逸らす。

「お前…」

 金山は何かを言おうとして、口を開く。しかし、時計を見て残り時間を確認すると、袋からパンを取り出して袋を開ける。俺も席に座り、弁当を取り出す。金山は無言で咀嚼し、飲み込む動作を繰り返している。喋っていたら時間もないし、というか話しかける勇気も話題もない。このまま大人しく食べていよう。
 金山も一言も発しない。

「…この前の奴らには会ってねえか」
「この前の奴ら…、あ。会ってない、です」

 金山は鼻で笑う。
 あれで懲りたのかは分からないが、連絡はないしすれ違ってもいない。最初はびくびくしていたのも、今ではすっかり元通りだ。


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