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 さっき、パシリにキスなんてすると思う? って訊いて来たよな? ……それって、もしかして…。

「確かめた、結果は…?」

 恐る恐る訊ねる。まさか、そんな。頼むから違うと言ってくれ。冷や汗を掻く俺を見て、山口はにやりと笑った。

「良かったね、好かれて」

 俺は顔を覆った。……やっぱり、そうなのか。…でも、何でだ? 俺は好かれるようなことを何もしていない。唸って理由を考えていると、山口は不思議そうな顔をした。

「どうしたんだ? 深刻な顔をしなくても、別にいいと思うけど」
「あ…いや、何で好かれたかわかんなくて」
「気がついたら好きになってたんじゃねーの? ま、気になるなら本人に訊けば?」
「き、訊けるわけないだろ!」

 声が裏返ってしまった。山口はけらけらと声を立てて笑う。

「答えてくれなさそうだもんな」
「いや、ていうか違った時が怖すぎる…」

 しかも告白もされてないのに、俺のどこが好きなの? って訊くとか、自意識過剰じゃねえか。

「……じゃ、俺は、これで」
「え?」
「話してんの見つかったらヤバイだろ? もう時間もあんまりないし、教室戻るわ」
「ああ――、そっか。うん、じゃあ」

 俺は踵を返して去っていく背中に向かって手を振る。そして気づく。……時間、かかりすぎてしまった。これは…金山、キレてるんじゃないだろうか。ひくりと頬が引き攣った。…教室、戻りたくない。

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