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「んなの、テメェが俺のモンだからに決まってんだろ」
「え」

 ひくりと顔を引き攣らせる。金山はそんな俺を見下ろしてから、は、と鼻で笑った。

「光栄に思えよ、俺専属のパシリってことにな」

 ――あ。
 パシリ、ってことだったのか。そうか。そう、だよな。
 ほっとしたような、それともなんだか少しモヤモヤするような。俺はすっと離れて行った金山を見上げる。金山はもう俺を見ていなかった。

「昼飯、買って来い」

 怠そうな声で俺に命令すると、踵を返し、ポケットに手を突っ込んでだらだら歩いて行く。

「は、はい…」

 俺は返事をした。金山は振り返らなかった。

















 購買の前に、今日何度も見た姿があった。

「あ、来た来た」
「……なんで居るんだ」
「話を聞こうと思ってね」

 山口はにやりと笑った。……ていうか、何でここにいることが分かったんだ? 俺の考えていることが分かったのか、山口は携帯を持ち上げた。「この近くで見たって聞いたんだよ」

「……はあ」
「金山の昼飯だろ? 早く買わないと時間ないぞ」

 はっ、そうだ! 俺も昼飯抜きになってしまう!
 俺は慌てて購買の中に入る。山口は俺の横に並ぶ。にこにこしている山口を横目で見た。

「…山口も買うの?」
「いーや? 俺はもう昼飯食べたよ」
「あ、そう…」

 本当に俺に話を聞くために来たのか。…まあ、俺もさっきのこと、どういうつもりか訊きたいし、さっさと買うとするか。

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