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「ウゼェな。殴るぞ」
「すぐ暴力に走る奴は嫌われるぜ? 嫉妬深い奴もな」

 山口は好戦的な笑みで金山を見る。金山はぴくりと一瞬だけ眉を動かし、何故かこっちを見た。

「……っ」

 金山は何かを言おうとしたが、苦虫を噛み潰したような顔をして口を閉じた。そして忌々しそうに山口を一瞥して、再び視線をこっちに向けた。

「……昼飯、買って来い」

 静かな声だった。俺は言われたことを数拍おいて理解し、こくこくと頷く。鞄から財布を取り出すと、山口が立ち上がった。

「達也、俺も行くよ」
「えっ?」

 山口はにこにこと笑う。金山はぐっと眉間に皺を寄せた。

「ああ!? 何でテメェまで付いて行くんだよ」
「別にいいだろ。友達なんだから」

 何故か山口は友達を強調するな。何でだ? 不思議に思っていると、ガシリと腕を掴まれた。山口かと一瞬思ったが、顔を上げると金山だった。目を見開く。ぐいっと引っ張られた。

「来い!」
「え、あ、あの!? ちょ、まっ」

 俺の言葉を無視して、どんどん歩いて行く金山。俺は振り向いて、山口を見る。山口は付いてきていない。ひらひらと手を振りながら、愉快そうな笑みを浮かべていた。


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