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 退屈な授業が終わり、欠伸をしながら教科書を片付ける。昼休みになったが、金山は来ていない。今日は来ないかもしれないな。来てほしいというわけでは決してないが、来るか来ないか分からないのは不安だ。来ない、と思っていたら来てがっかりしたことは一度ではなかった。
 俺は携帯を開く。サイレントにしていたため気付かなかったが、メールが来ていた。開くと、金山来た? という内容のメールだった。差出人は、勿論山口である。来ていない、と打とうとした時、がらりと音が鳴った。誰か教室を開けたんだろう。……もしかして、金山か? 恐る恐る顔を上げる。あ、と声が零れた。

「よ」

 山口が俺に向かって手を振った。周りからほっとした声が聞こえて来る。教室のドアが開くたびに緊張が走るのはこのクラスだけだろう。山口はへらりと笑って、教室に入ってきた。俺は立ち上がる。

「金山、来てないみたいだな」
「…ああ」
「ふーん、あ、前の席、もしかして金山の?」
「そうだけど」
「そっかそっか」

 そう言いながら金山の席に座る。ぎょっとして目を見開く。視界に入ったクラスメイトも目を見開いていた。しかもその顔は青い。多分、俺の顔も青くなっているんじゃないかと思う。

「ちょ、何やってんだ!?」
「何って、座っただけだろ」
「す、座っただけって! 立とう! 今すぐ立とう!」

 こっちは必死だというのに、山口は、はははと声を立てて笑う。

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