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「面白くないよ、別に」
「いや、面白いよ、絶対」

 何を根拠にそう言うのか。俺はそれ以上言うのもな、と思い、一言で会話を終わらせた。無言になって、ガタンゴトンと電車が鳴る。山口をちらりと盗み見る。何を考えているのか分からない顔で窓の外を見ていた。さっきの言葉、本気なんだろうか。期待してもいいのか? ……とりあえず、様子を見よう。もう一度山口を一瞥して、ぎゅっと鞄を握った。













 学校に近づくにつれ、ちらほらと同じ制服が目立つようになった。俺と山口を見て、皆驚いた表情を浮かべる。面白そうな顔をして横を歩く山口は、そういえば、と口を開いた。

「昼飯って、いつも買いに行ってんだよな?」
「…まあ、俺の分じゃなくて、金山のだけど」
「ふーん」

 山口は口角を上げて笑う。「それ、俺も一緒に行くから」

「え? 山口も購買で買ってんの?」
「うん、まあね」
「でも、俺急いで買いに行かなきゃなんないから…」

 一瞬やった、と思ったが、金山の昼食を買いに行くときはいつも走っているのだ。それに突き合わせるのはちょっとな…。
 しかし山口は笑顔で首を振る。

「別にいいけど?」
「え、でも…」
「連絡先教えてよ」

 俺の話を聞いてくれない。眉を下げていや、あの、と声を発すると、意地悪そうな笑みを浮かべる。

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