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 俺は遠い目で言い合いをしている生徒会たちを眺める。それにしても濃いメンバーだよな…。まさか、睨まれない、何も酷いことを言われないでいられる日が来るなんて思ってなかった。しみじみと思って、ふと、首を傾げる。
 何で転入生とまで言い合ってるんだ…? 意味が分からない。あ、嫉妬か、なるほど。…って、誰にだよ。

「孝太、ほら、あーん」
「は!?」

 いきなり目の前に一口サイズのケーキが現れ、ぎょっとして仰け反る。駄犬がニヤニヤしながらフォークを俺に向けていた。え、ええと、この流れって…。やろうとしていることは直ぐに分かった。
 何で俺が、あ、あーんとかやらないといけないんだよ! さっきやったよ!
 絶対にやるもんかと口を固く閉じると、一層嬉しそうに笑った駄犬。う、うわー…いい笑顔デスネ。

「ほらほらほら。お前の好きなチーズケーキだぞ」

 ぐりぐりと口に押し付けられるケーキ(俺のケーキは完食したはずなんだけど、お前どこからもってきたんだ、それ)。いい匂いが鼻に入ってきて、唾液が口の中で溜まる。た、食べたい。いやでも…。己の欲と戦いながら、必死に視線をチーズケーキから引き剥がす。
 …ていうか、だから何で俺がチーズケーキ好きなの知ってんだよ! 俺の情報色んな奴に駄々漏れなのか!?

「これ食べないとキスすんぞ」
「はあ!?」
「さん、にー…い」
「分かった! た、食べる! あーん!」

 ぱく、とフォークを口の中に入れると程よい甘さが口に広がる。あー、…旨い。さっきのと違ってこっちは甘さが控えめなのかもしれない。
 一人幸せな状態になっていると、駄犬が俺の頭をぐしゃぐしゃに撫でる。思いのほか優しい手つきに俺は思わず赤面した。

「なあ、もう帰ろうぜ。孝太ぁー」
「えー、孝ちゃんとまだ話すことあるし」
「僕もぉ、お昼寝したいしぃ」
「はい無理ー。孝太は連れて帰るから」

 子どもの喧嘩かよ。
 転入生の言葉は確かに少し有難い。正直早く帰りたい。俺はあっかんべえをしている転入生に呆れながら立ち上がる。

「あの、俺――」

 帰ります。その言葉は突然荒々しく開いた扉によってかき消された。

「お前ら仕事しろよ!」

 かっ、会長ー!? ていうか正論過ぎる!
 目に隈を作った色男、会長が俺たちをギロリと睨んだ。

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