21

 翌日の金山は更におかしかった。俺を探るような目で見ては、苛立ったように物に当たる。常時機嫌が悪く見える顔つきだが、今日の金山は本当に機嫌が悪いようだった。その原因は俺にあるらしい。そんなに昨日の出来事が腹立つのだろうか。そこまで怒らせるようなことをした覚えはない。それが次の日まで続くものであれば尚更だ。

「意味分かんねえ…」

 思わず呟くと、目の前の背中がぴくりと動いた。やべ、聞かれたか? 金山は振り返り、俺を睨んで溜息を吐く。

「誰のせいでっ…」

 声を荒げるが、俺が体をびくりと震わせると、途中で言葉を切って顔を歪めた。

「お、俺のせいですか」
「ああ?」

 当たり前だろ何言ってんだというような顔で俺を睨む。

「す、すみません」
「謝るんじゃねえ」
「え、あ、す、すみません」
「テメェ耳ついてんのか? 俺は謝るんじゃねえっつってんだよ」

 そう言われても、そんな顔で言われたら謝っちゃうんだよ! 俺はまた謝りそうになるのを抑えて、こくこくと頷いた。というか、何で謝っちゃいけないんだ? 今までそんなこと言ったことなかっただろお前。
 訝しげな表情をしていたのか、金山は何だよと眉を顰めた。

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