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金山は無言だった。校門を通ったところで、金山がちらりと俺を見る。じろりと睨むように見ると、口を開いた。
「お前」
「な、何ですか?」
「何ですぐに言わなかった?」
岡田たちに暴力を振るわれたことを何故すぐに言わなかったかということか。……言えるわけないだろ。言ったところで、俺には何の得もない。
俺は視線を下に遣って、ぐっと唇を噛んだ。
「おい、聞いてんのかよ」
苛立った声とガン、という音が響く。驚いて顔を上げると、ゴミ箱が倒れ、ごみが散乱していた。コロコロと蓋が足元に転がってくる。
「テメェを見てるとイライラする」
ずきりと胸が痛んだ。それと同時に怒りがわいてくる。じゃあ、俺はどうしたらよかったんだよ。お前は俺にどうしてほしいんだ。
目の前がぼやける。目の奥が熱い。ぼやけた視界の中で、金山が目を見開いた気がした。
「な、」
若干上擦った声。「何泣いてんだよ、テメェ!」
まさかと思い目に手を遣ると、しっとりと手が濡れた。本当に泣いてるらしい。ごしごしと目を擦ると、視界がクリアになった。同級生の前で泣いてしまったということに、顔が熱くなった。
「え、えーと、あの、その」
金山は珍しく動揺した様子で俺を見る。そして、大きく舌打ちをすると、鞄を俺に投げつけて、早足で歩き始めた。慌てて付いていこうとすると、来るなと怒鳴られた。俺は立ち止まり去っていく背中を呆然と眺める。
いったい何だったんだ…? 俺は鞄を手に抱えたまま、金山の意味の分からない行動の数々に首を傾げた。
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