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 俺の昼食を買いに来たのか? じゃあ、何で金山も…。まさか。まさかとは思うけど、ついてきてくれたのか? 俺があの男たちに絡まれたから? 金山の思わぬ行動にどきりとする。しかし、すぐにいやいやと首を振る。金山がそんなことするような人間じゃないと知ってるだろ、俺。

「おい、早くしろ!」

 げし、と脚を蹴られる。うん、やっぱり優しさと言うものを持ってないな、こいつは。ただ、岡田たちに振るった暴力より、軽いものだと気づかされた。考えればすぐにわかることだったのに。喧嘩慣れしているであろう岡田たちを一発で伸してしまうのに、俺が痛いと感じるだけで済むはずがない。
 金山に急かされたので、慌てて焼きそばパンを手に取って店員に渡す。店員の顔色が青かった。金額を伝えるその声も若干震えていて、俺の所為ではないけど、なんだか申し訳なく思った。俺は今奴に背を向けているけど、店員は見えてるからな。まあ、見なくてもどんな表情しているか分かるけど。
 パンを受け取ると、今度こそ教室へ向かう。昼休みの時間も、あと少しだ。教室にはほとんど人が戻ってきている。教室へ入ってきた金山を見て、教室が静まり返った。俺は悪くないんだけど、でも、ごめん! 皆! だからそんな責めるような目で見ないでくれ!
 金山に急かされる前に鞄から弁当を取り出し、金山に渡す。金山は無言で弁当を見て、それを受け取った。












 しんとした教室で食べた飯。空気が凄く悪かったから焼きそばパンも旨く感じなかった。お前のせいだと背中をじっと睨むと、金山が急に振り返る。ばちりと視線が合った。

「お前……」

 金山が途中で言葉を切る。そして俺を一瞥し、視線を机に落とす。言うか言わないか迷っている、のか? 初めて見る表情に俺は戸惑う。

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