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 思わず同情の目で岡田たちを見てしまう。そりゃ怒るわ。俺はまだマシな方かもしれない。金山が昼休みにいる時は俺が金山の分の昼飯を買わないといけないから金額的には結構いってるけど。彼女盗られたりいくらかは知らないけど財布盗られたりっていうのはないからな。まず彼女とかいないけど。

「ふーん」

 うわ、興味なさそう。怒り狂った不良二人がが金山に殴りかかる。しかし、あっさり負け、地面に伏してしまった。残ったのは岡田一人だけ。一瞬でやられた仲間を見て顔を引き攣らせている。二人がかりでも怪我さえも負わせられなかったのだから、岡田一人では金山が負けることはないだろう。そんなことを考えながらぼけーっと突っ立っていた。すると、ぐいっと引っ張られた。金山ではなく、岡田だった。金山も珍しくハッとした表情になっている。

「こいつを傷つけられたくなかったら、動くな」

 金山の俺の扱いを見て、良くそんなことが言えるな。金山は俺のことなんて全く気にせず殴りかかってくるに決まってるだろ。呆れた顔を向けると、腹を殴られた。まだ痛々しい痕が残っているので、少し当たっただけでも痛い。それなのに、結構な強さで殴られ、痛みに涙が出てきた。傷つけられたくなかったらとか言っておきながら早速傷つけてるよこいつ!
 腹を抱えて蹲っていると、ひゅ、と前を何かが通った。続いて鈍い音と、何かがぶつかる音。驚いて顔を上げると、隣にいたはずの岡田がいなくなっていた。きょろきょろと周りを見回していると、突然腕を掴まれ、ぐいっと引っ張られた。体制を立て直すと、引っ張った犯人を見る。不機嫌面の金山だった。俺をじろりと睨み、無言で制服を引っ張るとシャツを捲った。
 ちょっと待って。どういう状況だこれ。何で俺は腹を出してんだ。何で金山は俺の腹をじろじろ見ているんだ。

「おい」
「へっ?」
「これ、いつのだ」
「い、いつ、とは」

 腹を見て、ぐっと眉を寄せる。この傷がいつできたかと訊いてるんだよな…? まさかそんなことを訊かれるとは思わなくて、俺は目を見開いた。

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