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「ッチ、じゃあテメェの弁当でいい。戻るぞ」
「あ、はあ…」
じゃあ俺の弁当でいいって、俺は良くねえよ! 母さんが丹精込めて作った弁当をどうして何度も金山なんかに渡さなければならないんだ。不満が顔に出たのか、金山はぎろりと俺を睨む。
「んだよ」
「な、なんでもないです」
正直な気持ちを言うことができないというか、言ってしまったら俺の体は無事では済まされないので即座に首を横に振った。
金山は鼻を鳴らすと、屋上の扉へと足を向ける。そこで、空気と化していた岡田たちが制止の声をかけた。
「おい、待てよ」
「あ?」
「何勝手に帰ろうとしてんだよ!」
不良の一人が眉と目を吊り上げて怒声を上げる。金山は至極面倒そうに男を見遣る。
「テメェら誰だよ」
「誰だ…だって?」
男の蟀谷にぴきりと青筋が浮く。恐ろしい顔つきになった男を見てひいいと心の中で悲鳴を上げるが、金山は表情を動かさない。
「テメェ俺たちから何もかも奪いやがって…!」
「あー? 知らねえよ」
金山は片眉を上げて宙を見る。思い出そうとしているのだろうかと金山を眺めていたが、すぐに考えるのを止めてしまった。岡田は指を折りながら、数え始める。「えーと、財布だろ、チャリ、傘、女、たまり場に食いモンに…あとなんだっけ。まあいいや、そういうものを盗られたわけよ」
と、盗りすぎだろ。
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