13

「いや、それはちょっと…」

 控えめに断るが、男はいいから早くしろと聞く耳を持たない。携帯を出せと脅され、仕方なく取り出す。それを奪われ、勝手に操作された。そして耳に当てる。まさか電話!?
 いや、電話でも、メールでも俺だと分かった時点で無視だろ。もしかしたら、キレてでるかもしれないけど。何パシリの分際で電話してきてんだ、みたいな感じで。
 金山の反応を予測していると、男が俺に、にやりと笑いかける。

「お前のパシリは預かった。返してほしかったら屋上へ来い」

 なんかそういうような言葉どっかで耳にしたことがあるぞ…。
 満足げな表情の男に微妙な顔をしていたら、俺の顔に気付いた男が脛を蹴ってきた。俺は蹲って脛を押さえる。物凄く痛い。
 あれ、ていうか…金山、電話出たのか。キレて出たのか? 少し気になって自分のスマホを眺めるが、男の耳から離れたそれは、俺の方へと飛んできた。

「わ、」

 慌てて受けとる。落ちていたら傷が出来てしまうところだった!
 男はそんな俺を嘲笑うように見て、踵を返す。

「よし、屋上に行くぞ」

 金山は来るわけがないから時間の無駄だと思う。しかしそれを言うことはできず、俺は黙って男の後ろを歩いた。

[ prev / next ]



[back]