12

 顔の傷が治った頃。金山が学校に来た。いつものように怠そうに教室に入ってきて、俺の前の席にどかりと座る。俺のことを一度も見ることはなく、少しほっとした。どんな顔をすればいいのか、いまだに分からないから。
 あっという間に昼休みになった。昼飯を買うために立ち上がる。しかし、金山は昼休みが始まる少し前に教室から出て行ってしまったため、昼飯がいるのかどうか分からない。とりあえず、買っておいた方がいいかと財布を持って教室を出た。











「よう」

 目の前でにやつく男。先日俺をぼこぼこにした一人だ。俺は顔を引き攣らせ、男を見る。俺を待ち伏せしていたようだ。

「な、なんで…」
「まあそんなに怖がんなって」

 男は馴れ馴れしく俺の肩に腕を回す。怖がるなって、怖がるに決まってるだろ。俺は体を硬直させたまま、男の言葉を聞く。

「パシリくんに頼みたいことがあるんだわ」
「た、頼みたいこと?」

 嫌な予感がする。男が俺に頼みたいことって、金山に関係することしか思い浮かばないんだけど。

「ここに金山呼べよ」
「えっ」

 いやいやいや、無理だろそれは。勝手に連絡先を登録されたから、一応連絡をとることはできるけど。俺からは連絡するなと言われたし、仮に連絡したとしても、来るとはとても思えない。

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