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 俺のその心配は杞憂に終わった。しかし、家に帰って物凄く怒られ、心配された。誰にやられたんだと訊かれたが、名前は分からないので答えることができなかった。金山のせいだと言えばそうなんだけど、言う気にはなれなかった。
 疲れすぎて、そのまま寝てしまった。翌日、腹部の痛みで目を覚ます。起き上がって服を捲り上げると、それはもう醜い色になっていて、うげ、と顔を顰めた。その顔のまま風呂場へ行き、シャワーを浴びる。鏡に映る自分の姿から目を背け、ささっと済ませると、制服に着替えた。服を着替える時至る所が痛くて時間がかかった。
 腹が減っていなかったので何も食べずに家を出ようとすると、姉貴が学校に行くのかと驚いた様子で声をかけてきた。頷くと、呆れた顔で去って行った。行かないでいいなら行かないが、今日休むと、なんだか負けた気がする。
 気合いを入れ、心配する母さんに見送られながら足を踏み出した。














 昨日のように、駅で金山に会ってしまうのではないかと不安だったが、誰にも会わなかった。ほっとしながら学校へ行く。俺の顔を見て、誰もが二度見する。しかし悟ったような顔ですぐに逸らしてしまった。きっと金山にやられたんだと思っていることだろう。まあ、金山関係だから間違ってはいないけど。
 金山がこの顔を見たらどう思うだろう。…鼻で笑って終わりだろうな。金山はそういう奴だ。今日はいつ来るだろうとそわそわしていたが、その日来ることはなかった。


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