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俺がもっと強い人間なら、ここで断るなりなんなりできただろうが、生憎俺はパシリになるような普通のやつなのだ。男の睨みに負け、俺は男について行った。
着いたのは屋上だった。屋上なんて行ったことがないから良く分からないが、普通は鍵がかかっているもんじゃないのか。あっさりとドアを開け、屋上に足を踏み入れる男に続く。大人しく着いてきてしまったが、途中で隙を見て逃げたらよかったんじゃないかと今更ながらに思った。
屋上の真ん中で三人ガラの悪そうな奴がヤンキー座りをしていた。そいつらは俺たちを見ると、立ち上がる。
「そいつ何だよ」
一人が訝しげに訊ねる。残りの二人もうんうんと頷いている。どうやら俺のことを知らないようだ。そんな三人を見て、俺をここまで連れてきた男が呆れた顔をする。そして親指を俺に向ける。
「こいつ、あの金山のパシリくんだよ」
三人の目が見開かれた。そして、にやりとあくどい笑みを浮かべる。汗がぶわっと出てきた。
これはどう考えても、話し合いの雰囲気ではない。逃げないと。そう思うのに、体が動かない。足が縫い付けられたようだ。
「へえ」
「こいつが、あのパシリくんね」
「あ、確かになんか見たことあるわ」
男が俺の肩を抱く。俺と目が合うと、にっこり笑った。
「俺ら二年なんだけどさ、金山が生意気なことしてくれたわけよ。だからさ、パシリくんが代わりに責任とってくんね?」
それは驚くほど優しい声だった。
「って……」
いつの間にか気絶してしまったらしい。目を開けると、外が真っ暗だった。起き上がると、体中が痛くて顔を顰める。金山にボコられたことはあるけど、ここまでひどくなかったし、複数人でもなかった。なぜ俺がこんな目に遭わなくちゃなんないんだ。金山に勝てないからって、俺をボコるなよ。くそ、と吐き捨てる。顔に力を入れていないと、涙が零れ落ちそうだ。
早く帰らなければ。家族が心配しているだろう。だけど、帰ったら俺のこの姿について問いただされるに違いない。おまけに体が痛いから、体を動かしたくない。
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