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「じゃあ次は僕ですね。まあ別にあなたなんかに聞いてもらわなくてもいいんですけど」
「それなら無理に言う必要はないんじゃ…」
「何か文句でも?」
「い、いえ…」
ギロリと睨まれ、俺は顔を引き攣らせる。書記がそれを見て吹き出し、言った。「功ちゃんてば、怖い顔ー」
「怖い顔…?」
自分の眉間に手をやり、皺に気づいて驚いたように目を丸くして、俺を見る。な、何だ? 困惑気味に思った次の瞬間には、いつもの無表情に戻っていた。
「…僕は今、怖い顔をしていましたか」
「え、は、まあ…少し」
正直怖かったので頷くと、数秒黙って、すみません、と俺に向かって小さく頭を下げた。
俺は目を見開いてそれを見つめる。転入生と一緒のときに何度も睨まれたが、何故今になってそんなに気にするのだろう? …謎だ。
「わー、功ちゃんが謝ってるよ。ねえねえ、見た? 松ちゃん」
「話しかけないでよねぇ、この僕に」
「……それはごめんねー」
笑顔で睨み合う二人の間に火花が散る。二人とも緩い感じなので、同族嫌悪なのか、仲が良くないらしい。
「ええと、それで…若葉様は一体どんな相談を――」
「やめてくれませんか、それ」
「え?」
それって、どれ?
いきなり不機嫌な様子の一年会計が発した指示代名詞に俺は首を傾げる。それ、なんて言い方では何をいっているのか全然分からない。文脈からしても。
「名前ですよ。どうして様なんて付けているんですか。耳障りです」
「あー、確かに思った。俺と孝ちゃん同級なのに敬語だしね」
「僕のことは是非涼と」
「僕も鈴って呼んでねぇ」
「え、え、いや、あの」
そりゃあ生徒会役員を名前で呼んだりタメ口なんてできるわけないだろ! ただでさえ親衛隊から嫌がらせを受けているのに、そんなの火に油を注ぐようなものだ。ていうか名前呼びとかハードル高すぎるだろ! いろんな意味で! というか一年会計、耳障りとか酷いな!
「ほら、呼んでくださいよ」
「よ、呼べません」
「は?」
…顔が怖いです。
「わ、若葉……くん」
促され、小さく呟くと、一年会計が目を細めた。そしてニヤリと笑う。
……え。数秒固まり、笑ったんだと気づいて目を見開く。笑ったところなんて初めて見た。転入生にさえ、笑ったところを見たことがないと言っていたのに。凄いプレミアなものを見てしまった、俺。それにしてもやっぱ美形なんだなあ…。
「呼べるじゃないですか」
満足そうに、先程とは違い、ふわりと柔らかく笑った一年会計に俺は顔が熱くなるのを感じた。
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