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 学校に着いてからも、俺は金山と一緒にいた。席が前後なんだからまあ近くにいることは当たり前なんだけど、俺が言っているのはそういうことではない。いつもならそこらへんの物や人にあたりながらサボるため教室を出て行くのに、今日は何故かどこにも行こうとしない。時折振り向いて俺を睨むので、俺はずっとびくびくしていた。結局、昼休みになった今でも、席から動こうとはせず、また、俺になにもしないし言わない。何もないなら何もないで恐ろしい。何を企んでいるんだろう。
 というか、いい加減腹が減ってきた。俺は母親力作の弁当があるからそれを食べたらいいんだが、目の前のこの不良が飯を食うまで、俺は食べられない。いつもなら昼休みになった直後に行けと命令されるのに。先に食べたらいいのにと思うだろうが、俺は最初、そのことで金山に殴られた。なんでも俺より先に飯を食うな、だそうで。
 俺は机の上の弁当を見つめる。待てをされた犬というのはこんな気持ちだろうか。ぐるるると腹が鳴った。ああ、恥ずかしい。しかし聞いているのは金山だけだ。何故なら、この教室にいるのが俺と金山だけだからだ。薄情なクラスメイトたちは、金山が動かないので早々に出て行ってしまった。

「腹減ってるわけ?」

 突然金山から話しかけられた。俺は慌てて顔を上げる。じっと金山が俺を見ていた。今度は蛇に睨まれた蛙の気持ちが分かったぞ。俺はこくこくと頷いた。壊れたロボットのような動きだったに違いない。

「へえ」

 金山が笑った。いや、笑ったという表現は似つかわしくない。それは、俺がこれまで見てきた中で一番恐ろしい邪悪な笑みだった。
 金山が手を伸ばす。その先は――俺の弁当だ。ひょいっっと取ると、鼻で笑う。そして何も言わず前に向き直ってしまった。
 え、ちょっと待て。まさか。

「あ、あの、金山くん」
「アァ?」

 金山は振り返った。そして恐ろしい形相で俺を睨む。ひいい話しかけてごめんなさい! 俺はすぐさま謝った。

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