21

 「それじゃあ、また明日来るよ」そう言って、シュウは去って行った。

「遠野」

 代田の心配そうな声が耳に入る。俺は布団をぎゅっと握りしめた。顔を上げると、代田が近寄ってきた。

「もしかして、まだ体調が悪いか?」
「…いや、もう大丈夫だ」
「そうか」

 俯いていたからだろうか。体調について訊ねてきた代田に笑って返すと、代田も顔を緩めた。

「それならさ、ちょっと行きたいところがあるんだけど」
「行きたいところ…?」
「うん」

 どこだろうか。頭に色々な場所を浮かべながら頷く。出かけるなら用意をしなければならない。流石にスウェットのまま出るのはな。あと寒い。本当に風邪引くかもしれない。クローゼットを開けると、生地が厚い物を選んで取り出す。

「あ、じゃあ、外出てるな」
「おう」

 代田は、俺が風呂に入る時や着替える時傍を離れる。四六時中いるのもストレスが溜まるし、裸を見られるのは若干気まずいものがあるから、代田が気を遣える奴で良かったと思っている。
 代田が部屋から出て行ったのを確認し、服を脱ぐ。ひんやりとした空気に晒され、再びぶるりと震える。スウェットに着替えた時のように素早く服を着て、ふうと息を吐く。

「――あ」

 俺は思い出した。まだ見ていない加奈からのメールを。

[ prev / next ]



[back]