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 遠野と一緒に話したり遊んだりするのは、とても楽しかった。最初は恋人というより仲がいい友達という感じだったけど、暫く経って、それは本当に恋愛感情になっていた。内山と遠野が仲良さげに話しているところを見た時に、俺は遠野のことが好きなんだと気づいた。俺と付き合っているのに、内山と仲良くするな。そういう醜い感情が確かに俺の中に存在したのだ。
 気持ちに気付いたからといって、特に変化はなかった。――表面上は。いつ本当のことを言おうか、頭に占めるのはそれだった。遠野のことが好きだから、こんなモヤモヤした気持ちのまま付き合うことはできない。だから、あの日、言ったのだ。別れて欲しい、と。











(side:遠野)


 俺は代田の話を聞いて、そうだったのか、と目を丸くした。別れようと言った理由は分かった。しかし、あの時どうして去ってしまったんだ?

「すぐに言ってくれたら…」

 良かったのに。俺は小さく呟く。代田は気まずそうに目を逸らして、首の後ろに手を当てた。

「それは…ちゃんとした告白を、後日しようと思って…」
「……そうか」

 その告白、聞きたかった。死んでんじゃねえよ、馬鹿。俺は口から出そうになる言葉を、慌てて飲み込んだ。そんなことを言っても代田が困るだけだ。

「ごめんな、遠野」
「もう謝るなって。俺は全然気にしてないから」

 安心させるように笑うと、代田は安堵の笑みを浮かべた。

「…話は終わったみたいだね」

 ずっと黙って部屋の隅に立っていたシュウが、近寄ってくる。そして代田に目を向けると、大きな目を細めた。

「じゃあ、さっさと成仏してくれる?」
「なっ…」

 俺はシュウの言葉にカッと目を見開いた。さっさと成仏してくれるって、なんてこと言うんだ。代田も動揺した様子で成仏、と呟いた。

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