15

 俺は勢いよく起き上がる。急に動いたせいでぐらりと体が傾いた。なんとか踏ん張り、部屋のドアを開けた主を睨む。相変わらず可愛い顔をしているシュウがいた。
 安心したけど、でも、これ不法侵入だぞ。どうやって入ったんだ。

「なんだ、思ったより元気そうじゃん」

 しかも、全く悪びれる様子もなく、なんだとか言っている。俺はひくりと頬を引き攣らせた。

「…あの、もしかして、鍵開いてた?」

 もしかしたら、鍵が開いていたのかもしれない。それならば俺の不注意だ。ただ、開いてるからといって入るのはどうかと思うが。

「いや、閉まってたよ。開けてもらったんだ」

 …誰に? 管理人さんとかにか?
 シュウはそこで、ちらりと横に目を遣る。呆れた顔であのさあ、と声を出した。

「いい加減出てきたら?」

 俺はシュウの横に視線を移す。そこには何もいない。家の中に誰かが隠れているっていうのか?
 しかし姿を現したのは、代田だった。情けない顔をして、シュウの後ろに隠れるようにして立っている。幽霊に立っているという表現でいいのかちょっと分からないが、足は床に付いているのだから立っていると言いたくなる。
 ところでなんて顔をしているんだ。俺の疑問は、シュウによって解消された。

「アンタの体調不良は、こいつの所為だから」
「……え?」

 こいつと言いながら代田を指差す。代田が申し訳なさそうな顔をしてごめんと謝った。

「こいつが僕のところに来て、アンタが寝込んでるっていうから来たんだよ。で、鍵はこいつに開けてもらったわけ」

 代田が? 幽霊なのに鍵を開けられるのか? そういえば代田はベンチに座ることができた。この一週間物を触っているところは見たことはないが、鍵を開けられるということは、普通に人間のように生活できるのかもしれない。ただ、実体がなくて、他人に認識されなだけで。

「でも、どうして代田が…?」

 代田を見る限り、故意にしたことではないだろう。じゃあ、何でだ? 首を傾げて、眉を顰めた。

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