14

 汗で服が肌に貼り付いていて気持ち悪い。着替えようとベッドから降りてクローゼットに向かう。フローリングが裸足を通して体の熱を奪っていく。元々熱はないため、気持ちいいという感情はなく、ただ寒いと思った。

「あ…」

 俺は携帯に目を遣って、目を瞬く。ピカピカと光っているそれは、誰かからの連絡を示していた。着替えを取るのを止め、先に携帯を取る。
 加奈からのメールが届いていた。俺は画面に指を載せる直前で止める。――どうしよう。俺は小さく唸って、画面を見つめた。加奈とは、一週間前…あの日から会っていない。代田がいるから気まずかったというのが理由だが、途中から加奈のことを考えるより、代田のことばかり考えていた。加奈への罪悪感と、何を書かれているのか分からないという恐怖感で、メールを開けないでいる。
 携帯を置いていたところに戻して、本来の目的だったクローゼットへ足を向ける。スウェットを取り出して、ベッドに服を置く。汗で濡れた服を脱いた瞬間、あまりの寒さに変な声が出た。急いでスウェットを着て、携帯を取るとベッドに入った。
 このままメールを見ないわけにはいかない。意を決してメールを開こうとした時だった。遠くの方でガチャリという音がした。

「っ!?」

 今のは確実に玄関のドアの音だ。…誰かが入ってきた!? 俺は布団を頭から被る。代田は幽霊だから、ドアなんて開けて入ってくるはずがない。合鍵なんて誰にも渡していない…というか、そもそも合鍵なんてないし、鍵はちゃんと掛けた。まさか、……泥棒?
 ばくばくと心臓が煩い。どうしよう。見つかったら殺されるのだろうか。嫌だ、死にたくない。でも……。死んだら、代田と…。 

「邪魔してるよ」

 部屋のドアが開く音と共に、聞き覚えのある声が耳に入ってきた。

[ prev / next ]



[back]