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「……な、なんだって?」
「俺、遠野に付いて行くから」
聞き間違いじゃなかった。俺は顔を引き攣らせて理由を訊ねる。
「だって、俺は遠野に会いに来たんだし、シュウの傍にいたって意味ないだろ?」
確かに、と頷く。しかしずっと傍にいられるというのは、その、なんというか。とりあえず早速週に連絡しようと思って紙に視線を落としたが、そこにあるのは解読不能な文字の羅列。……連絡できねえじゃん。
「遠野、もしかして迷惑か?」
悲しそうな声に慌てて顔を上げると、眉を下げた情けない表情をしていた。う。ちくちくした痛みが胸を襲う。
「……行くぞ」
俺はがっくりと肩を落として、呟いた。
「ああ、遠野、一人暮らししてんだ」
代田はマンションを見上げて笑う。「絶対一人暮らしはしないって言ってなかったっけ」
「まあ、あの時は――っと、早く入るぞ」
返事をしてしまってから、口を閉じると周りを確認した。……良かった、誰もいない。実はここに来るまで代田と普通に会話をして、周囲の人に訝しがられたのだ。そりゃそうだ。代田は他の人には見えないんだからな。代田があまりにも幽霊っぽくなさすぎて、話しかけてしまったり返事をしたりしてしまうんだよな…。
代田は申し訳なさそうな顔をして頷き、ロックがかかったままの自動ドアをすり抜けた。俺はカードを翳し、ロックを解除してから自動ドアを通る。
ボタンを押してエレベーターを待っていると代田が訊ねてきた。
「何階なんだ?」
俺は指で三を作る。へえ、と呟く代田はなんだか楽しそうというか、わくわくしていた。
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