11

「……な、なんだって?」
「俺、遠野に付いて行くから」

 聞き間違いじゃなかった。俺は顔を引き攣らせて理由を訊ねる。

「だって、俺は遠野に会いに来たんだし、シュウの傍にいたって意味ないだろ?」

 確かに、と頷く。しかしずっと傍にいられるというのは、その、なんというか。とりあえず早速週に連絡しようと思って紙に視線を落としたが、そこにあるのは解読不能な文字の羅列。……連絡できねえじゃん。

「遠野、もしかして迷惑か?」

 悲しそうな声に慌てて顔を上げると、眉を下げた情けない表情をしていた。う。ちくちくした痛みが胸を襲う。

「……行くぞ」

 俺はがっくりと肩を落として、呟いた。














「ああ、遠野、一人暮らししてんだ」

 代田はマンションを見上げて笑う。「絶対一人暮らしはしないって言ってなかったっけ」

「まあ、あの時は――っと、早く入るぞ」

 返事をしてしまってから、口を閉じると周りを確認した。……良かった、誰もいない。実はここに来るまで代田と普通に会話をして、周囲の人に訝しがられたのだ。そりゃそうだ。代田は他の人には見えないんだからな。代田があまりにも幽霊っぽくなさすぎて、話しかけてしまったり返事をしたりしてしまうんだよな…。
 代田は申し訳なさそうな顔をして頷き、ロックがかかったままの自動ドアをすり抜けた。俺はカードを翳し、ロックを解除してから自動ドアを通る。
 ボタンを押してエレベーターを待っていると代田が訊ねてきた。

「何階なんだ?」

 俺は指で三を作る。へえ、と呟く代田はなんだか楽しそうというか、わくわくしていた。

[ prev / next ]



[back]