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俺の驚いた顔を見て、代田は笑う。
「全然見えないよな」
「ああ…」
「なにが全然見えないって?」
「うわっ!」俺は突然聞こえた声に肩を震わせた。声が聞こえた方向――後ろを向くと、腕を組んでこっちを見ているシュウがいた。
「な、なんでもない」
「…なんでもないって顔してないけど」
じとりと睨むような目に乾いた笑みを浮かべる。シュウはすぐにまあいいかと溜息を吐き、ベンチの前までやって来た。
「それで、話は終わった?」
代田は唸る。眉を下げ、困ったような顔でシュウを見上げる。俺は美男美女だなと思いながら二人を見た。
「話したいことは、あるはずなんだけどな」
「……本人に会っても思い出せないか」
ふうと溜息を吐くが、先程のように呆れたものではなく、落胆だった。
「時間がかかりそうだね」
「う…ごめんな」
「うざいから謝らなくていいって」
シュウはポケットに手を突っ込み、ぐしゃぐしゃの紙と黒いペンを取り出す。そして何かを書いて、それを俺に渡した。紙がぐじゃぐしゃなせいもあるが、字が汚すぎる。意味もなく目を細めてミミズが這ったような字を眺めた。数字のようなものやアルファベットのようなものが見える。シュウという字が辛うじて読めた。
「何かあったら連絡して。それじゃ、僕帰るから」
くるりと方向転換してさっさと帰ろうとするシュウ。え、まさかこれ連絡先なのか。連絡して、って読めねえんだけど!
慌てて引き留めようとして、あれ、と思う。
「代田は行かないのか?」
「ああ、うん」
代田はにっこり笑った。いい笑顔だったが、何だか嫌な予感がした。
「俺、遠野について行くから」
……エッ?
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