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 俺の疑問が伝わったのか、代田は苦笑する。

「どうしてこういうことをしてくれるのかも、何者かも分からない。訊いても答えてくれなかったから」
「…信じてもいいのか?」
「それは大丈夫だと思う。人を騙すような奴には見えない」

 真っ直ぐ俺を見る瞳の奥には、シュウを信頼する気持ちの強さが見えた。どきりと心臓が鳴る。生前と変わらない、強くてきらきらとした目。俺はこの目が好きだった。

「お前がそう言うなら、そうなんだろうな」

 まあ俺も、出会って少ししか経っていないが、シュウがそういう奴だとは思わなかったし。うんうんと頷いていると、代田は嬉しそうに笑った。
 それにしても、普通だ。とても霊と話しているとは思えないくらい普通だ。代田が昔と変わらないからか、霊らしくないからか、実感が湧かない。内には久しぶりに会った友人に対する懐かしさだけだ。
 代田は「あ」と何かを思い出したように声を上げて、眩しいものを見るかのように目を細める。

「そうだ、遠野ってもう大学生か」

 奇妙な言葉だ。代田は確かに同い年なのに、違う気がしてくる。

「俺も、生きてたらなあ…」

 ずん、と胸の奥が重くなる。きらきらとした瞳が一瞬だけ濁って見えて、目を逸らした。
 代田が亡くなったのは、高校二年生の時だ。飲酒運転の車に撥ねられて搬送先の病院で息を引き取ったという。

「……ごめん、こんなこと言われても困るよな」

 「折角また遠野い会えたことだし、もっと明るい話が良いよな」遠野はそう言って、ぐるりと周りを見回した。そして、ベンチを指差す。

「あそこ、座ろうぜ」

 頷いて、代田は座れるのかと疑問を抱いた。ちらりと代田の脚を見る。透けてはいるが、自分の脚で立っている。感覚の違いは分からないが、普通に座れそうだ。俺は代田に続いてベンチへと足を進める。



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