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(side:龍太郎)

「りゅーたろ、いいの?」

 ばくばくと心臓が煩く鳴る。…なんで、なんでだ? どうして俺だって分かった? どうして…俺は、見つけられて、嬉しいと感じてるんだ。

「りゅーたろってば」
「っ、なんだよ」

 元希に腕を掴まれ、俺は立ち止まる。振り返ると、呆れた顔をして俺を見た。

「原西くんと仲良くなりたいなら頷けばいいじゃない」
「何で俺があんな奴と!」
「だって、仲良くなりたそうな顔してるよ」

 ばっと顔を触る。そんなことしたって分かるはずないのに。俺は元希の笑い声に口をまげて、手を下した。

「素直じゃないねえ」

 溜息を吐いて、足を進めると慌てて元希が隣に並んだ。昼休みにあいつが来るとは思っていなかった。学年が違うから、そうそう会わないと思っていたのに、まさか、あそこで会うとは。
 原西の様子を思い出し、あれと不思議に思う。そういえば、ビビってなかったな、俺に。それに、俺が甘い物とか色々、自分に似合わない物が好きってこと知ってるのに。俺がこんなんと分かっても引いた様子はなかった。じわりと顔に熱が集まる。

「あ、照れてる」

 俺は無言で元希の脛を蹴った。













 放課後。さっさと帰ろうとしていた俺にニヤニヤ顔の元希が近づいてくる。面倒事に違いないと思った俺は鞄を肩にかけて元希の横を通り過ぎようとした。

「ちょっとちょっと、りゅーたろ。無視って酷くない?」
「何企んでやがる?」
「しかも決めつけてる! 何も企んでないって、うん、うん」

 嘘だ。こいつ嘘吐いてる。俺はじろりと元希を睨んだ。そして、はあ、と息を吐く。溜息だ。

「……何だよ」
「流石りゅーたろ! あのね、屋上に行ってほしいんだ!」
「嫌だ」
「ありがと…あれ!? 断られた、俺!? 待って帰らないでりゅーたろ。お願いだってば」

 何でわざわざ屋上に行かないと行けないんだ。暑いし行きたくない。しかし、元希が行け行け煩い。おまけに俺に体重かけてくるから重い。

「…ッチ、わかったよ」

 仕方なく俺は屋上へ向かうことになった。元希も付いてくると思ったら、じゃあ俺はこれで、と帰ろうとしていた。

「はあ? 俺だけで行くのかよ」
「俺、行くって信じてるからね」

 にっこり笑って、俺の制止を聞かず歩き出してしまう。その背中をじろりと睨んで、憂鬱な思いを抱えながら俺も歩き出した。


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