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原西の家は何だかがらんとしていた。温かみのない家だ。
「家族は?」
原西は俺を一瞥して、さっさと歩いて行ってしまう。答えたくないというオーラが出ている。俺はにやりと笑ってその背に声をかけた。
「いねえのか」
「……テメェにゃデリカシーってもんがねえのか」
「そりゃあ悪かったな。正直なもんで」
親友の顔を思い出す。あいつは俺の言葉を聞いて、よく酷いと言って笑っていた。恐れられ、敵の多い俺の傍を離れない変人。ふ、と笑みが零れる。
「何笑ってんだよ」
「別に」
原西は不愉快そうに俺を睨んで、階段を上がっていく。後に続いた。原西の部屋も物が少なくて、生活感のない部屋だった。じろじろと眺めていると、早く座れと言わんばかりの目で床を指した。座ると、沈黙が流れた。俺はなんとなく、原西の顔を見つめる。口は悪いし短気だが、女が黙っていない顔だ。咲はこの男のことが好きだったのだろうか? 俺に対してはこんな感じだが、咲には優しかっただろう。好きだったかもしれない。俺が咲だったら、好きでもない、虐められる原因となった男と一緒にいたくないからな。まあ、咲が原西を突き放すことができなかっただけかもしれないけど。
ぼおっとしていた原西が漸く視線に気づいたのか、こっちを向く。そしてぎょっと目を見開いた。
「何でこっち見てんだよ! 何かついてるか!?」
「あ? いや、特に。ただ男前だなって思ってただけだ」
「っな…!」
かあっと顔が赤くなる。何照れてんだこいつは。意外に照れ屋なのか?
「咲の体でんなこと言うんじゃねえよ!」
ああ、そこか。まあ、そうだよな。だが、俺の言葉でこう照れられるのはちょっとな…。気持ち的に嫌だ。
「…テメェはどんな顔なんだよ?」
「普通」
「なんだそれ。つまんねえの」
チッと舌打ちして俺から視線を外す。
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