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 平島たちが戻ってきて、他のアトラクションを数か所回った後、次はこれだと向かった先。俺が最も嫌いな――お化け屋敷だ。一人で入らされたり、中で置いて行かれたりされて、怖いものが嫌いな俺はさらにそういった類のものが嫌いになった。
 しかし、この場には平島がいる。あんなやつと一緒に入って恥を晒すのも嫌ではあるが、背に腹は代えられない。悪魔よりマシだ。
 平島がいるからこそ、俺は了承したのだ。平島と俺のペア、悪魔と彼女のペアならばと。それなのに、平島はあろうことか、俺と悪魔で入れと言ってきた。俺はもちろん、彼女も控えめではあるが反対した。しかし悪魔が俺の腕を掴んで、歩き出す。振りほどけないくらい強い力だった。
 グッドラック、と後ろから聞こえてきたので、俺は振り返らないまま奴に向かって中指を立てた。















「お前、何でここに来たの」
「え…?」

 俺はおどろおどろしい雰囲気に身を縮めながら、悪魔の言葉を聞き返した。ここに、というのはお化け屋敷? それとも遊園地?

 「遊園地だよ。嫌いだろ」悪魔は苛立ったように言った。俺は不機嫌そうな悪魔の姿に、少し驚いた。こいつなら俺のビビりように、腰が引けているのに腹を抱えて笑うはずなのに。

「ああ…。ええと、平島が、」
「……あいつとなら来てもいいって?」

 すっと目が細くなる。ついと吊り上がった口に、ひ、と引き攣った声が出た。

「俺が誘っても拒否りやがったくせに」
「だ、だってそれはお前が……――ひぎぃっ!」

 にゅる、と冷たいものが足に触れて俺は思わず悪魔に抱き付いた。驚いたのか、びく、と悪魔の体が震える。

「……俺が、何?」
「あ、え、えっと。お前が……。…えっと、とりあえず、放して…」

 慌てて離れようとしたが、奴は何故か俺の体を自分に引き寄せた。一瞬で恐怖が飛んでいき、緊張でがちがちになった。

「早く言え」
「…お前が、俺の嫌がることばかりするから」
「はァ?」

 悪魔の顔が呆れて歪む。

「そんなくっだんねえ理由で俺は断られ続けたわけ?」

 …ええ? これ、くだらない理由か? 俺は顔を引き攣らせた。

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