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――あれから三十分後。
「あれあれ〜。奇遇だねえ」
出てきた悪魔たちに向かって白々しく声を上げた平島を微妙な目で見ていたら、肘で突かれた。仕方なく俺は笑みを奴らに向ける。悪魔と彼女は目を見開いて、それはもう驚いているようだった。
「な、なんで平島くんたちが…」
彼女は丸くて大きい目をパチリと一回瞬かせると、俺を見て――悪魔に視線を遣った。悪魔は目を細めて俺を睨む。ずきりと胸が痛んだ。
「そりゃあ、遊びに来ているんだよ。ここは遊園地だからね」
「……二人で?」
「うん」
「あ、そ、そうなんだ」
……寂しいやつ、って思ってそうな顔してんな…。そう思いながら、俺は一言も喋っていない悪魔が気になって仕方なかった。
「折角だから、一緒に行動しない?」
「えっ」
彼女の顔が固まった。デート中の奴らに一緒に行動しようなんて普通言わねえよな。彼女はにこにこ顔の平島を困ったように見る。そして悪魔を窺うように見た。
「あの、斎藤くん…」
「――勝手にしろよ」
「へ…」
彼女は悪魔に断って欲しかったに違いない。呆然と悪魔を見るが、奴の視線はこっちに向いていた。――俺を、睨んでいる。
「なに。文句でもある?」
「う、ううん! ないよ!」
「ふん……」
慌てて首を振った彼女を一瞥して、興味を失ったように逸らす悪魔。……本当に付き合っているのか聞きたいくらい、冷めているように思えるのだが…。俺は平島を見た。平島は無表情で悪魔を見つめていて、ぞっとした。……こいつは、こんな顔もできるのか。
「…おい」
「…え、ああ、うん? なんだ」
「いや、別に……」
「そう? よし、じゃあ、行こうか」
ん? ちょっと待って。何故腕を掴む。平島が俺の腕を掴んで歩き出そうとした時。俺が、手を放せと言おうとした時。低い声が、耳に入ってきた。
「キメ―もん見せないでくれる?」
平島の腕を放して、ギロリと睨みつける。――俺を。
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