3

「じゃ、十時に駅前の時計のとこね」
「……おう」
「ばったり会ったってことにするから、バラすんじゃないよ。じゃあね」

 結局、押し切られて遊園地に行くことになってしまった。俺は憂鬱な思いで平島を見送った。ばったり会ったって…男二人で遊園地でいるところあいつに見られたくねえんだけど。絶対馬鹿にされるよなあと溜息を吐いた。
















 嫌だ来るなと思えば思うほど早く来てしまうものだ。日曜日の朝。俺は鏡の前に立っていた。
服は問題なく決まった――というか、決められていた。これを着ろと渡された服は、あきらかに新品だった。何故指定された服――わざわざ買ったのかそれとも買ったが着れなかったものなのかはさておき――なのか、平島の考えていることは良く分からない。

「まあ、なんでもいいけど…」

 俺は鏡に映った自分を見る。服が良いからか、いつもよりかっこよく見える。ふ、と思わず笑みが零れる。何だかデートへ行くみたいだ。形式上デート、ではあるけれど…これは、悪魔と彼女の気を引く作戦なのだ。正直男二人なのにどうやって彼女の気を引くのか分からないが、まあいい。
 時間をチェックする。今から家を出たら十時くらいに着くだろう。財布とスマホを手に取って鞄に突っ込むと、俺は家族に出掛ける旨を伝えて、家を出た。――いつになくおしゃれしている俺を見て、彼女かと騒いでいるのはもちろん無視した。


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