7

「尋も…っ?」

 明の悲痛な声にずきりと胸が痛む。
 ――…俺?

「お、俺…は」

 声が擦れた。俺は明のことが好きだったけど、でも…。
 ちらりと永良を見る。永良はじっと俺を見つめている。俺の答えを待っているようだ。

「俺は……俺も、明のこと好きだった。でも」
「っ! もういい! お前らなんか知るか! 絶対許してやらないんだからな!」
「あ、明…」
「お前なんかが俺の名前を呼ぶな!」

 明はそう叫ぶと、保健室を飛び出していった。保健室は一気に静かになり、俺は息を吐く。少し頭が痛い。

「っし、寝るぞ」
「ぐえっ!」

 襟首を掴まれベッドに投げ出された。げほげほと咳き込んでいると、後ろから腕が伸びて腰に回った。

「ちょ、え、お、おい」
「まだ顔色が悪い。寝ろ」

 だからなんでこの体制なんだよ! 他のベッド使えばいいのに、何故わざわざ…。そこまで考えてはっとする。

「な、永良…。こういうの、好きな奴にやった方がいいと思うんだけど」
「だから今やってんだろ」
「え」
「お前が好きだっつってんだよ」
「え、……!?」

 どきっと心臓が跳ねた。おおおお俺のことが好き!? 

「な、なんで…」
「日に日にやつれていくお前見てたら、ほっとけなくなって気がついたらな」

 こっち向けよ、と言われ腕の力が緩み、そろそろと向きを変えた。至近距離に端正な顔があり、目を逸らした。

「…返事はまだいい。でも、覚悟しとけよ。絶対に落としてやるから」
「そ、それは――」

 ないから、と続けようとしたときに、額になにかが触れた。それが唇だとすぐに気づき、顔がじわじわと赤くなる。

「結構脈ありかもしんねえな」

 にやりと笑った永良に違うと叫んで、俺は目を瞑った。
 次の日から永良の猛アタックが始まることを、この時の俺は知らない。














fin.

中途半端!

以下登場人物紹介です。

結城 尋(ゆうき ひろ)

王道爽やか。腹黒ではない。
明のことが好きだった。

永良 隼人(ながら はやと)

王道不良。
明のことが好きだったが…。

佐藤 明(さとう あきら)

アンチ系王道主人公。
自分が愛されてないと満足できない。




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