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「…で、付き合うのか」

 恥ずかしさであわあわとしていた俺は、その言葉にはっとする。

「だ、駄目だ!」

 俺が尚志と付き合っても、尚志は幸せにはならない。そもそも、尚志は本当に俺のことがそういう意味で好きなのか?
 ぶんぶんと首を振ると、尚志は不機嫌な顔で俺を睨んだ。

「何でだよ?」
「何でって、お前はやっぱり女の子と付き合った方がいいだろ」

 俺と付き合ったって、なにもメリットがないということを告げるが、尚志はどうでもよさげに頭を掻いた。

「俺がどうしたいかは、俺が決める。お前は俺が好き。俺も、お前が好きだと思う。だから付き合う。…それでいいじゃねえか」

 尚志の手が俺の頬に触れる。ひんやりとした冷たい手だ。俺の顔がまだ熱を帯びているから、尚更冷たく感じ、気持ちがいい。ふ、と尚志が笑った。

「顔赤いな、お前」
「だ、誰のせいだと…」
「俺だな」

 尚志が楽しそうに笑うから、もうこれでいいんじゃないかと思い始めてくる。尚志が他の子を好きになるまで。この冷たい手が他の子に触れるまで――このままで。












おまけ

大「そういえばお前高野の連絡先知ってたんだな」
尚「…いや、知らなかったけど。ダチに教えてもらった」
大「ああ…そうなのか。でも高野、場所言わなそうだけど…どうやって訊きだしたんだ?」
尚「お前どうしてるか訊いたら、平野が大樹のこと狙ってるかもしれないって慌てて場所教えてきたぞ」
大「え…お、俺狙われてたの?」
尚「気づけよ。つーかなんであんなくっついてたんだよ(イライラ)」
大「いや…普通思わないだろ? チャラかったし、そういう奴なのかと…」
尚「もうあいつには会うなよ。合コンもダメ」
大「お、おう(嬉)」








fin.


以下登場人物紹介です。

田村 大樹(たむら たいき)

尚志のことが好き。
爽やか系男子。

尚志(ひさし)

彼女の奈美に指摘され、別れてから気持ちに気づいた。

奈美(なみ)

尚志の元カノ。
可愛い。

高野(たかの)

普通の高校生。
大樹の友達。尚志のことはちょっと怖い。

平野 朝陽(ひらの あさひ)

実は普通に大樹と仲良くなりたかっただけ。
誤解されやすい。無意識に人を煽る。

南 佳奈(みなみ かな)

大樹のことを好きになりかけていた。
合コン後、高野と仲良くなる。


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