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「お、おい、ちょっと待てって。俺戻らないと…」
声をかけると、尚志は立ち止まった。
「大樹」
苛立ったような声を出され、俺は口を閉ざす。俺、もしかして知らないうちに尚志を怒らせることをやってしまったのだろうか。
「あいつと仲いいのか?」
「あいつって?」
「お前の隣に座ってたやつだよ」
「ああ…平野とかいう? いや、初対面だけど…」
何故平野の話…?
なんだか嫉妬されているみたいで、少しドキドキしたが、尚志は彼女さんにベタ惚れだ。嫉妬はないだろう。
「初対面とベタベタしてたのかよ」
「ベタベタって…」
あいつが馴れ馴れしかっただけだ。俺は嫌だったと否定したかったが、否定したところで、別になにも変わらない。
「…尚志、何かあった?」
なんだか様子がおかしい。気になって訊ねると、尚志は小さく溜息を吐いた。
「奈美と別れた」
「はっ?」
予想だにしていなかった言葉に目を見開く。別れた? なんで?
「…どうして」
「その話は後からする。とりあえず、帰るぞ」
「え、でも合コンが」
「うるせえ」
すたすたと歩いていく尚志とファミレスを交互に見て――結局俺は、尚志の後を追った。
「入れよ」
「おー。お邪魔します」
リビングを覗くが、誰もいなかった。尚志は俺に親はでかけてるぞと声をかけ、部屋へと入っていった。俺もそれに続く。
「…はー、疲れた」
ばふんとベッドに寝転がった尚志に、そういえばあの時息が切れていたなと思い出す。
「ごめん」
「は? 何が?」
「走ってファミレスまで来たんだろ?」
「別にいい。…それより、合コン、どうだったよ。楽しめたか」
「途中で連れ出してきておいて、よく言うよ。…まあ、楽しかったんじゃないか。でも、もうああいうのはいいかな」
「…ふーん」
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