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 俺の冷たい視線に気づいていないのか、へらへらと締りのない顔をこっちに向けてくる。

「大樹くんっていうんだー」

 馴れ馴れしいなと思うが、名前で読んで欲しくないというわけではなかったので、おれは苦笑を返した。平野は続けた。「俺は朝陽だよー」
 呼べということだろうか。

「朝陽くんね。えーと、君は?」

 俺は平野に愛想笑いを返して、女の子に顔を向けた。女の子はえっと目を丸くする。

「わ、私ですか?」
「うん」
「南です。南佳奈」

 南さんは友達ももうすぐで来ると思いますと申し訳なさそうに言った。















 それから少しして、南さんの友達だという二人が到着した。これで全員らしい。合コンって、もっと人数が多いイメージがあったけど、こういうもんなのか? 意外に少ないな。
 暫く話し、大分打ち解けてきた頃。何故か絡んでくる平野の言葉を適当に答えていると、突然高野が立ち上がった。皆が注目する中、高野はスマホを持ち上げて、眉を下げた。

「電話かかってきたから、ちょっと席外す」
「いってら〜」

 俺を一瞥して、外へ出て行く高野に首を傾げる。何か言いたそうな顔だった。

「大樹くんって、モテそうなのに彼女いないんだねー」

 南さんの友達でコギャル風の子が爪を弄りながら意外そうに言った。見た目はちょっと凄いけど、普通にいい子っぽい。

「モテないよ、全然」
「うっそだぁ」

 横から口を挟んできた平野にホントだと答える。

「何人くらいと付き合った?」
「……えーと」

 俺は苦笑した。それだけで伝わったようで、ええっと驚きの声が上がる。

「もしかして、好きな子がいるとか?」

 ニヤニヤしながら俺の肩に手を回してきた平野にぎくりとする。慌てて否定しようと時だった。

「おい」

 平野と俺が何者かの手によって引き離された。びっくりして振り向くと、息を切らした尚志の姿。眉間に皺が寄り、見るからに不機嫌だ。その後ろには早足でこっちに向かってくる高野。
 ……え、な、なんで尚志がここに? フリーズする俺の横で、平野が文句を垂れている。

「だ、誰?」

 南さんの困惑した声が聞こえる。尚志は南さんの座っている方を一瞥し、俺の腕を掴む。

「帰るぞ」
「えっ、ちょっ」

 ど、どういうことだ!? 混乱しながら高野を見ると、申し訳なさそうにしていた。……高野の電話の相手って、まさか。
 俺は呆然としたまま、尚志に手を引かれ、ファミレスを後にした。
 

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