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(side:大樹)

「いや〜来てくれて良かったよ!」
「ああ、うん」
「冷めてんなあ。女の子だぞ女の子!」
「だからなんだよ――あ、そういえばお前のとこ男子校だっけ」
「そうなんだよ! 癒しがない! 華がない!」

 高野はげんなりしながら言った。確かに周りに一人も女の子がいなかったらなあ…。俺は尚志だから好きなんであって、男が好きなわけじゃないから、気持ちは分かる。

「そういえばあいつ、元気してる?」
「あいつ?」

 ぱっと表情を変えて訊ねられたその言葉に首を傾げる。高野は水を一口飲んで、もう一度あいつだよと言った。

「尚志」
「あー、うん、元気だよ。相変わらず彼女さんと仲が良いよ」
「リア充爆発しろ」

 こらこら。俺は苦笑して、でも――心の中で、そうなればいいのにと悪魔の囁きがあった。だめだ、こんなこと考えちゃいけないのに。考えを振り切るように、高野に話しかける。

「尚志がどうかした?」
「いや…なんとなく」

 なんだ?
 いきなり歯切れが悪くなった高野を不審に思った。尚志と高野は仲が悪かったわけではなかったと思うんだけど…。ああ、でもあんまり話しているのを見たことないな。
 ……少し気になるけど、まあいいや。
 そう思っていると、高野が、あ、と声を漏らす。俺の後ろを見ている。俺は振り返った。

「こんにちは」
「ちわーっす」

 可愛い女の子となんだかチャラそうな奴が来た。もしかして、合コンメンバーか? 高野をちらりと見ると、目が合った。そして、頷かれる。

「こんにちは」

 俺は二人に笑いかける。そして席を詰めた。高野はこっちに来たほうがいいんじゃないかと思っていると、チャラ男が隣に座った。高野は女の子にこっちおいでとニヤニヤしている。おい、お前、ちょっと。

「きみ、イケメンだねえ」
「え? ああ、どうも」

 お前は香水臭いな。鼻が歪みそうな臭いに顔が引き攣りそうになる。こいつ、ホストみたいだな。普通にしてた方が格好いいんじゃないかと思うんだけど、まあ、本人が良ければいいか。

「きみさあ」
「おい、平野。大樹嫌がってんだろ」

 俺の表情を読み取ったのか、高野が呆れた顔で男を見ている。平野っていうのか、こいつ。高野の友達なんだろうか。

「えー。だって俺、イケメンくんと仲良くなりたいし」

 お前何しに来てるんだよ。女の子と仲良くなれよ。

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