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近づいてきた男は俺を見下ろす。
「…っな、なんだよ」
「誰だ」
「だ、だからお前には関係――」
「気になんだよ」
「……は?」
気になる?
言われたことを理解できず、ぽかんと口を開けて男を見上げる。どうして――と思ったところでハッとする。そうか、俺を懐柔しようって魂胆だな。あのネックレスも…それだったら納得できる。食事を分けてくるのもだ。そして仲良くなった後、裏切ろうって、そういうことか。俺は胸が痛むのを感じて、眉を顰めた。こんな奴どうだっていいのに、どうして…。
「どうしても行くって言うなら、俺も行く」
「はっ? だ、駄目だ!」
宮司を巻き込みたくない。俺は慌てて首を振った。
「じゃあ行かせねえ」
どうしよう。俺は時計を見た。約束の時間を過ぎてしまっている。とりあえず遅れるということを連絡しないとと思っていると、タイミングよく携帯が鳴った。ディスプレイを見なくてもわかる。相手は宮司だ。
じろじろと見てくる男を無視して電話に出ると、心配を含んだ声で宮司が俺の名を呼んだ。
「悪い、まだ時間かかりそうだ」
『…大丈夫か?』
「ああ、うん、全然」
『…そうか。待ってんぜ、ハニー』
「あいよダーリン」
くすりと笑って電話を切る。男に向き直ると、更に機嫌が悪そうだった。
「…ダーリンてのはなんだ」
「……ダーリンはダーリンだろ」
「付き合ってんのか」
何バカなことを言っているんだと呆れる。訂正してもじゃあどうしてダーリンって呼んでるみたいなことになりそうだから、俺は訂正せずに頷いた。
ぎゅっと皺が寄る。男同士ってこと、別にこいつは気にしないだろう。こいつはウェーズリーを好きなんだから。
「……んだよ、それ」
どうしてか男は傷ついているようだった。予想外の反応に俺は瞠目する。
「もういい、どこにでも行っちまえ」
男は吐き捨てるように言って、ソファへと戻っていった。その背中になんだか哀愁を感じて、意味が分からなくなる。こいつの考えも、俺の気持ちも――良く分からなくなった。
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