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「……マサ」
袋を見て目を見開いたチカちゃんは、袋を見つめたまま言った。
「これ、俺のために…?」
「…だったら何。父さんに頼まれたから、仕方なくやったことだよ」
「そうか、俺のために…」
嬉しそうにはにかむチカちゃんを直視出来なくて顔を逸らす。なんでそんなに嬉しそうなんだよ。仕方なくやったって言ってんじゃん。
「マサ、ありがとう」
「……それ、渡しに来ただけだから」
「は? ちょっと待て、どっか行くのか?」
いちいち言わなきゃいけないのそれ。うざいなあ…。俺は無言で立ち上がった。慌ててチカちゃんも立ち上がる。
「お願いだ、マサ。聞いてくれ」
「何を聞けってーの」
「俺が転校したあの時のこと」
ぎくりと体が硬直する。
チカちゃんは俺の前から姿を消した。俺に一言もくれず。チカちゃんは、転校してしまったんだ。
どす黒い何かが、チカちゃんが憎いと訴える。だけど、その中にチカちゃんに対する期待も含まれていて。俺は静かに座った。
話を聞いてくれるということが嬉しかったのか、チカちゃんは笑った。ただしそれは力のない笑みだったけど。
「何も言わなくて、悪かった」
「……なんで言ってくれなかったの」
「離れようと思った」
「……は」
「お前のそばにいていい人間じゃなかったから」
チカちゃんは真剣な眼差しでこちらを見た。
そういえば目の力強さは、変わってないなとぼんやり思った。
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