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いくらなんでも自分で何か食べてるだろうということに気づいたのは家に着いてからだった。連絡がきた後慌ててさぁちゃんに断りを入れて、コンビニで適当に買って来たけど…。
「どーしよ…」
家の前でうろうろしながら考える。もし、何も食べてなかったら。その時に責められるのは俺でしょ。でもなあ…。
今のチカちゃんは、苦手だ。と、溜息が出る。
「とりあえず、ちょっと様子見るだけ…」
そろりそろりと家に近付いて、ドアを引く。鍵はかかってないみたいだ。少し速まる心臓の音が耳元で聞こえるような気がして、ぶんぶんと首を振った。
がチャリとドアの閉まる音が響く。でもそこまで大きくなかったから、大丈夫だろう。そう思ったんだけど。
リビングへと続くドアが勢いよく開いて。俺は声のない悲鳴を上げた。
「っ、マサ」
「……どぉも」
「どこに行っていたんだ、こんな時間まで」
「……どこだっていいでしょ」
女の子じゃないし、なんでいちいちそんなの報告しなきゃいけないわけ。じっと睨むと、チカちゃんは眉を顰めた後、俺に近づいてきた。
ぐいっと手首を掴まれて慌てて振りほどこうとした。けど、力が強くて無理だった。
「ちょ」
待って俺靴履いたまま!
このまま引っ張られそうなので放せと訴えてみると、チカちゃんは俺の足元をちらりと見て溜息を吐いた。
なにそれ。溜息吐きたいのは……俺のほうだし。
手は解放されたけど、チカちゃんは俺が靴を脱ぐのを待つつもりみたいだ。くっそ…このままさぁちゃんのとこ戻ろうと思ってたのに。早くしろと急かしてくる視線に耐え切れず、俺は靴を脱いだ。足を家に踏み入れると、再び手首を掴まれて。
「うわわっ、ちょっと!?」
無言のままリビングまで引っ張られて、最後には座れと命令された。態度でかすぎでしょ。座れってなに。…チカちゃんはそんなこと言わない人だったのに。
むっとしながら座ると、目の前にチカちゃんも座る。テーブルに肘をついて顔の前で手を組んだ。その姿どころか動作も惚れ惚れするくらい格好良くて、俺は堪らず顔を逸らした。
「マサ、…どうしてそんな格好を」
「チカちゃんこそ、全然違うじゃん」
「……あれは、若気の至りっていうか…正直、思い出したくないんだ」
「は?」
若気の至り? 思い出したくない? なにそれ。頭にカッと血が上る。まるで俺と過ごしたことすらも若気の至りだと言わんばかりだ。
「ふざけんなよ! っれ…、俺がっ、どんなに…」
「マサ…?」
「どんなにあの日々が楽しかったと…っ」
ぽろりと零れたのが涙だと気づいたのは、チカちゃんにビニール袋を投げた後だった。
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