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 いや聞いてねーんだけど!? なにそれなんで!?
 絶句する俺に近付いて来たチカちゃん。肩をポンと叩いて、一言。

「よろしく」

ちらりと父さんを見た。にこにこしている。俺は顔を引き攣らせて笑った。

「…はは、うん、よろしくね…」

 …なんで客間じゃなくて俺の部屋なんだよぉ、父さん。






 風呂から上がると、父さんとチカちゃんが談笑していた。タオルに髪の水分を吸収させながら、父さんに声をかける。

「とーさん、お風呂空いたよ」
「ああ、うん。じゃあ入ってこようかな。知親くん、先に寝ていいからね」
「はい、ありがとうございます」

 父さんがリビングから出て行って、俺とチカちゃんだけになってしまった。テレビが点いていないから、異様に静か。俺はじっとこっちを見てくるチカちゃんに気づかないふりして、リモコンに手をかける。

「……マサ」
「…なぁに」

 どきりとした。チカちゃんのこんな真剣な顔、見たことない。

「それは、何の真似だ?」
「なにって、テレビ点けようと──」
「マサ」
「……別に関係ないじゃん。あのさぁ、チカちゃん。俺の部屋で寝てもいいけど話しかけないでね」
「…何を怒っているんだ」
「はあ!? 何を怒ってる? 本気で言ってんの」

 チカちゃんは眉を顰めた。俺はぎゅっと唇を噛んで、自分の部屋に足を向けた。おいと投げかけられた声は無視だ。
 チカちゃんが暫く家にいるかと思うと憂鬱だった。

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