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どっか行けと言われても、授業があるだろう。何を言ってるんだと迫を見続けていると、痺れを切らしたのか大きな舌打ちを残して自分の席へと戻っていった。
俺はすぐに迫のことを頭の隅に押しやり、鞄から本を取り出す。ひそひそと話していた奴らは、俺が何も反応しないからか、次第に静かになった。
その中で、憎々しげにこっちを睨んでくる迫に、俺は気づかなかった。
漸く放課後だ。
よし帰ろう。俺は内心うきうきしながら鞄に荷物を詰め込んで立ち上がる。周りの奴らは俺を見て皆一様に不快そうに顔を歪めた。随分と嫌われたものだな。まあどうでもいいけど。それよりも今日は帰りに本屋と花屋に寄ろう。
「迫、じゃーな」
「おー」
迫をちらりと見ると、クラスメイトに笑いかけていた。視線を感じたのか迫がこっちを向く。俺と視線が合うと一瞬目を見開き、ギッと睨みつけてきた。
「なに見てんだよ」
冷めた声。不機嫌な顔。相当俺が嫌いらしい。しかし、付き合ってた頃はこんなに敵意は向けられなかった。迫はよく分からないな。俺はふいっと視線を外し、教室を出た。
「あっ! 守屋さん!」
花屋に着くと、俺に近寄ってくる女の子がいた。花を抱えて笑う彼女を見て、俺の顔は自然と緩んだ。
「こんにちは、花満さん」
「はい、こんにちは!」
にこにこと笑う彼女は花満さん。この花屋の娘だ。俺は彼女を気に入っている。花満愛華という名前も含めて。この花屋にはよく来ていて、必然と話すようになった。ああ、そういえば今朝、母さんには花を見てデレデレするのを見せたことがないと言ったが、この花屋の人には見せたことがあるな。
「なんかお久しぶりですね」
「ああ、まあ…色々忙しくて」
迫と付き合ってからは中々来れなかった。少し来なかっただけでこんなに懐かしいものなのかと思っていると、花満さんが苦笑した。
「寂しかったんですよー。母も、兄もまだ来ないのかーって」
「そうか」
それを想像して、くすりと笑う。花満さんは良かったら上がってくださいと言ってきて、俺は頷いた。
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