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 同性愛に対して寛容なのは、学校の特色のせいなんだそうだ。何でかは分からないけど、恭の学校は昔から同性愛者が自然と集まってくるのだという。時には興味本位で入ってくる人や何も知らない人も集まってくるけど。恭は苦笑を浮かべて言った。

「恭も…」
「ああ、俺はバイかな」

 さらっと言われ、僕は目を丸くしたまま小さく頷いた。そしてハッと気づく。学校に同性愛者が多く存在するというのが本当なら、たまきもそうだということの可能性が高い。恐る恐る訊ねると、恭は笑った。「さあね」

「でも、あの相沢陸に迫られてるんだから、時間の問題かもな」
「……っ」
「なあ、あんな奴諦めて、俺にしない?」
「――は?」

 突然言われた言葉に思考が追いつかない。

「俺、結構良太のこと気に入ったし。とりあえずさ、友達からってことで、宜しく」
「ちょ、え、ちょっと待って!」
「はい、携帯出してー」

 僕の声を無視して手を差し出してくる。早く、と急かしてくるので仕方なく取り出す。その瞬間携帯を奪われ、勝手に操作された。そして一瞬目を細めたかと思うと、ぽいっと投げ返される。わたわたしながら受け取った。

「じゃ、今度遊ぼうなー」

 にいっと笑った恭は、金髪を靡かせながら去って行った。



 







 恭とは連絡を良く取り合って、何回か遊ぶようになった。彼といるときはいつも息が詰まる思いだったけど、恭といると楽だった。そしてなにより楽しい。
 彼からの連絡を待つより、恭からの連絡を心待ちにするようになった頃。彼の機嫌が何故か急降下していた。きっとたまきとの関係が思わしくないんだろう。そう思っただけで、他に何も感じない。吹っ切れたのかな、と僕は嬉しくなった。だったら、次にしなきゃいけないことは、このセフレという関係の解消だ。途中から抵抗しなくなったから、彼の中では僕はセフレという関係を受け入れていると思っているに違いない。確かにそうだったけど、今では違うのだから、きちんと終わらせなければ。

「あの…」
「あ? んだよ、話しかけてくんな」
「す、すみません…でも」
「うっせぇな」

 チッと舌打ちをして、僕を睨む彼。あまりの怖さに瞬きすらもできない。そんな僕を動かしてくれたのは、携帯だった。
 恭だと知らせる着信音に恐怖が吹っ飛んで僕は急いで携帯を手に取った。また遊ぼうという言葉に口元が緩んだ。

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