▼ 23
普通に映画を観られると思った俺が馬鹿だった。こいつが俺と遊びに行くなんてことするはずないのに。何で期待してしまったのか。
どんよりとしている俺を見て、加治は楽しそうにしている。やっぱり、こいつは勇者というより、悪魔だ。
「さて、次はどこ行く?」
まだ行くのかよ。もう帰らせてくれ。俺の悲痛な叫びは心の中に留まり、口に出すことはなかった。
「なんだよ、行きたいとこねーの? じゃあ俺決めるけど」
「ほっ」
「ん?」
やばい、このままではまた変な嫌がらせを受けてしまう。俺は慌てて加治の嫌がらせを受けなそうな場所を口にした。
「本屋がいい」
「……本屋ね。まあ別にいいけど」
俺は心の中でガッツポーズする。この不満そうな顔。これで嫌がらせをしてこないだろう。俺は自然と笑みを浮かべていた。
[ prev / next ]
[back]